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月曜の午後の授業なんて、何で選択しちまったんだろ。
しかも今日はクリスマスだぞ?
あーあ。
今年最後&悪友のコージのいない授業は退屈そのものだ。
アイツがいなきゃ休んでしまうと教えてもらうことも助けてもらうことも出来なくて、かったるくても出席だけはしたオレを褒めて欲しいよ。
窓からボーッと外の景色を眺めていると、お尻のポケットん中でスマホがブルッと震えた。
教授に見つからないようにこっそり取り出して覗き見た画面に、オレは釘付けになった。
【オラージュ行きたいんだけど…今週時間取れる?】
ORAGE(オラージュ)は、オレの友達がバイトしてる、結構雰囲気のいい飲み屋。
オレとコージと、サークルの仲間のツバキの3人でよく行く店だ。
まだ学生のオレらでも気軽に入れるのは、コージがそこの店長の甥っ子で、そして奥さんにベタ惚れな優しい店長、ヤマトさんのおかげ。
オレらはその店で酒の味を覚え、上手な酒の飲み方を知った。
そして……
オレはツバキに惚れていて、
ツバキはコージに惚れてることを知った。
コージもコージで、満更でもないんじゃないかと思ってる。
最近は、よく二人でこそこそ話してんのを見かける。
“上手になったよ?アレならイケるって!”
なんてコージが言ってんのが聞こえちゃった時は、ぶっちゃけ“大人な夜の話”なんだと随分とヘコんだりしていた。
ツバキからのLINEをニマニマと何度も見直して、かれこれ30分ほど経つことに気付いた。
オレを喜ばせる文字に見えるけど、これはいつもの誘いでしかないのは百も承知。
【いつでもいいよ。金曜とかどう?コージにも連絡しておくよ。あいつ飲みたいって言ってたし】
ツバキがコージを直接誘えずにオレにワンクッション入れてんじゃねぇのかな…っていうのが続いていたからそう送ったのに、
【コージくんは誘わないで二人きりじゃダメかな?話したいことあって】
ツバキから送られてきた文面に、
「嘘だろっ?!」
と、思わず声を出してしまい、
「嘘ではありませんよ、年明けすぐの提出ですからお忘れなく」
レポート提出期限を教授が繰り返し、教室内にクスクスと笑いが起こった。
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