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「え?アンタ独り暮らしなの?」
「うん」
朱鷺は碧が独り暮らしだと言うことを知る。この日、碧は朱鷺の家事も手伝っていた。どうりで男子にしては洗濯物を畳むのといい、料理の手際が良すぎる事といい、家事全般が出来すぎると思っていたがそう言うことかと納得した。
母子家庭で、母親との二人暮らしだった。しかし、母親は働きすぎで、体を壊し、そして母親は還らぬ人となった。居ないと言われた父親は実は生きているかもしれないと言われ、その手懸かりがこの街にあるかもしれない。だから中学三年の夏休み前という、なんとも中途半端な時期に、この街へやって来た。
しかし、住んでいると言われる住所へ向かったが表札には、聞いてた名前ではなかったので、もはやそこには住んでいないんだと諦めていた。
「僕ね……ずっと母さんが働き詰めだったんだ。休みもなくて一生懸命働いてくれて、夜も仕事をして、家には手帳の加工やら、ダイレクトメールの封入やらのダンボールが置いてあった。箱折りの仕事とか手袋の検品とか。僕は家にいるときはその内職を手伝ったりしていたんだよ……母さんはいつも言ってた。ごめんねって」
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