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母は直ぐに病院に運ばれた。過労だった。ろくにご飯も食べていないから、栄養も足りていなかった。治せないものじゃなかった。金さえあれば。だけど、祖母も、母の兄、つまり碧の伯父も出すお金はないと言った。誰もお母さんを助けてはくれなかった。それは自分自身もそうで、早速新聞配達を始めたが、もう遅かった。碧は心底自分が嫌になった。
また、母は生命保険をかけており、その受取人は当然自分だった。秘かにコツコツと貯金もしてくれていて、普通に生活する額と、国公立の大学ならなんとか進学出来るだけの額はあった。亡くなってからも自分を守ってくれる母の気持ちがかなり複雑だった。
こんなことになるならば、もっと自分自身を大切にしてほしかった。もっと周りを頼ってほしかった。
部屋を整理していると遺書が出て来た。きっといつかこうなることは予測できていたのだろう。随分と古びていた。
その遺書には謝罪と碧の事を愛していると言うことが書かれていた。しかし、最後にはこう書かれていた。
─貴方のお父さんは生きています─
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