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「蒼。君も僕の復讐の対象。僕の事殺したかったら。殺されないよう頑張ってね?」
その眼はいつもの綺麗なものではなく、とても濁った碧だ。闇を折り重ねて出来た深い深い闇の色。
それは蒼も同じだった。蒼の眼は随分と濁り、その眼は深い闇の色へとなっていた。
ビルの屋上は老朽化が進んでおり柵は幾つか壊れており背にしたら間違いなく落ちてしまう。そして落ちてしまえば間違いなく死ぬ高さだ。
「さぁて。クライマックスだね」
遠くからはサイレンの音が聞こえる。誰が呼んだのか警察が駆けつけたのだろう。
二人はナイフを向けて殺し愛が始まった。
「はっはっはははははは。蒼?そんなものなの?蒼の憎しみって?ぬるい。ぬるいなぁ」
青野蒼は身体能力が高く、反対に翠川碧は体が弱く、身体能力は低かった。身体能力は蒼の方が高い。しかしこの場において身体能力の差などあってないようなもの。もっとも大事なエネルギーはそんなものではない。
「僕はね?ゴホッ……ゴホッ……ずっとずっとずーっと、…………憎しみを糧に生きてきたんだ。それがたった今生まれたての憎しみなんかに負けるわけゴホッ……ゴホッ…………ないだろ?」
その通りだ。蒼の憎しみ等今生まれたばかり。対して碧は物心付いたときには既に抱いていた。そして、母の死をきっかけにそれは爆発的に成長を遂げた。そんなものが蒼に負けるはずはないし、そんなものが、碧に届くはずなどない。
しかし、この場には二人だけではなかった。勝敗を分けるとしたらまさにその差だろう。
「なっ!まだ動けたのか!!死に損ない!!」
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