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二人の父は碧の脚にしがみつく。やめてくれと潰れた喉で叫んでいる。そんな死に損ないに気を取られた時にナイフを振りかぶられた。
何とかよけるが、碧の脚に刺さってしまった。それを抜き取りなんとか距離を取ろうとする碧。しかしもう後ろに下がることは出来ないところまで来ていた。
「碧……いいえ。兄さん。終わりにしましょ?」
蒼は詰め寄っていた。後ろの柵はもう壊れかけており、少しの体重を掛ければ壊れてそこから落ちるのは目に見えている。
逃げ場のない碧。碧の勝ちだ。
蒼はナイフを拾って碧に突進する。その時
「アオちゃん……」
手を広げてそこに立つ青年は、先程までの無表情で濁った眼をした男ではなく、自分の良く知る、自分の愛した優しい青年だった。その人は眉を下げてそれでも、どこまでも優しく笑っている。
そうだ。この人は碧なのだ。自分の愛する碧なのだ。止まれ!止まってくれ!そう思うが体はもう動いている。なんとかナイフを捨てたが、突進した勢いは止めることは出来ない。
その時に碧を突き飛ばしてしまったが、
「ミ、ドリ……」
蒼は間一髪、碧の事を掴んだ。しかし、碧の体がいかに華奢であろうと、女子である蒼が支えるのには限界があった。
掴んでいる両の手はギリギリと悲鳴をあげている。
「なにをしているんだ!?早この手を離せ!!」
「ムリよ。だって。貴方はミドリなんだから。兄だからとか、憎しみの対象だからとかの前に貴方は私の愛するミドリなんだから」
「だからそれは!!」
バンっ!!その時屋上の扉が開いてゾロゾロと複数の人間がやって来た。
「そこまでだ!!」
そう。そこへ現れたのは警察だった。
「斬り裂き魔翠川碧!!傷害罪の容疑及び現行犯だ!!逮捕状も出ている!!」
逮捕状を持って警察が駆け寄ってきた。
「え?ミド……リ?」
蒼は後ろを振り替える。そしてすぐさま碧の方へ向き直る。
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