<chapter4 愛と憎しみ-love and hatred->

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蒼が碧の家に行った日、蒼は碧の家に泊まった。そして、蒼が家に帰って直ぐに碧は朱鷺を呼んだ。 「…………」 「どうするの?」 朱鷺が出された紅茶を啜りながら、碧に問いかける。残酷なことを聞いている自覚はあった。それでもここに呼ばれて、それに応じた以上は彼の答えを聞くのが“心友”としての自分の義務だと思っていた。 「僕は。父親を許せない」 やはりそうか。朱鷺は思った。その答えが導き出すものは地獄だろう。朱鷺は一呼吸置いて、 「そう。じゃあ殺すの?」 その言葉を言った時に、心が痛んだ。昨日は卒業式だったというのに、自分はなんて事を彼に言っているんだろう?心友に非道い事を言っている自分が憎かった。 だから彼の行うことは全て肯定しよう。例え世界が彼を否定しようとも自分だけは彼を肯定しよう。 しかし彼の言葉は予想とは違った。 「ううん。殺すのは父親じゃあない」 父親ではない。その言葉に、朱鷺は固まる。殺すのは父親ではない。となれば、考えられるのは恋人であり、妹だと思われる人物。 「まさか、アオを?」 しかし、碧は首を横に振る。 「ううん。殺すのは」 その次に出てくる言葉が朱鷺には予想できた。でも聞きたくなかった。その言葉だけは。 「僕自し─」 バンッ!!テーブルを激しく叩く。彼の事は全て肯定したい。誰を殺すにしても肯定したい。共犯が必要ならば自分がなってあげても良い。残酷な宿命を背負った彼を一人で地獄にいかすわけにはいかない。自分も背負ってやる。だから、どんな事でも肯定しよう。そう思った。 だが、彼が言いかけた言葉。恐らく自分自身という言葉だろう。そう思えば、それは引っくり返ってしまう。それだけは許せない。朱鷺は本気か?と睨み付ける。しかし碧はいつも通りに優しい眼をしている。 名前の通り、エメラルドのように爽やかな笑顔。安らぎを与える碧のような笑顔が、真紅のガーネットのように燃ゆる感情を穏やかにさせた。
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