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「あのね…僕。アオちゃんを……ううん。蒼を愛してる。それで母さんも愛してる。そして、母さんを愛しているからこそ、父親を憎んでしまう。どうしようもないくらいに。でも蒼の事を愛してるから、父親を殺すことは出来ないよ。そんな事をすれば、蒼は悲しんで、自分を責めてしまうから」
「だったらどうしてあんた自身が死ぬことになるのよ?」
「簡単なことさ。そうするしかないんだよ。そうするしか……」
母親への愛。恋人への愛。父親への憎しみ。その全てを背負い、その全てを選べない。しかし、それでも答えを出さなくてはいけない。
自分の生きてきた人生は、そんなに甘くない。憎しみを捨てることは出来ないのだ。だが、その憎むべき相手が父親で、しかもその父親が蒼の父親であると言うのならば、その父親を殺せば蒼は悲しむなんて生温いものではない。
だったら蒼に恨まれて、自分で命を絶つべきだ。そうすることで、蒼も守れ、母の遺品に復讐を誓ったというのに、それを破ることになる。だからその誓いを破った罰を受けることにした。
碧はそう考えてた。そして、その考えは誰に否定されても、曲げるつもりはない。
優しいその眼を見れば彼がどれだけ本気かがわかった。
朱鷺は泣いた。彼の選んだ答えはあまりにも救いがない。彼の選んだ答えはあまりにも残酷だ。
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