15人が本棚に入れています
本棚に追加
初めてテスト勉強を自習室にてしているときだった。碧が独り暮らしだと知る。
「お母さんは遠い土地。お父さんは……」
と言葉を濁してしまう碧。デリケートな問題だったのだろう。碧はとても悲しそうな表情をする。いいや、悲痛で苦痛な表情。悲しくて痛い、苦しくて痛い。そんな気持ちが、滲み出ていた。
その感情が決壊するまで時間はかからなかった。
蒼は泣くと言うよりは、慟哭に近い碧を優しく抱き締めた。
蒼はしまったと思う。なんてデリカシーの無いことを聞いてしまったことだろう。この人はいつも笑っていた。それを
こんな顔にさせてしまって。否。ひょっとしたら目の前のこの姿こそが、彼の真の姿なのかもしれない。
彼が笑う場所はあれど、泣ける場所はあるのだろうか?その場所になりたい。蒼はそう思った。それから碧に恋心を持つようになるのに時間など掛かろうはずもない。ただ、それが恋心と自覚したのは、先にもあるように、二人が生徒会を開始して、会長、副会長になってからだった。
告白する切っ掛けをくれたのは、クラスメートであり、碧とは同じ中学出身の紅 朱鷺。
「え?アンタ達付き合ってないの?」
「ああああ当たり前じゃない!!!」
ため息をつかれて腕組をしている紅朱鷺。両想いなのに気持ち悪っと言った朱鷺にどういうことか尋ねれば
「そういうこと以外に何があんのよ?」
とまた溜め息をつかれてしまった。
コレで少し勇気が出て、告白したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!