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結局、平野くんは帰りに僕の家に寄ってくれたから、僕は玄関からダウンジャケットを返すことができた。
平野くんの後ろには、ヤマトくんや、他のクラスメイト達もいて
「早く風邪なおせよ。今度は、お前も呼ぶから」
って言ってくれた。
「平野くん、歌のプレゼント、ありがとう」
僕がそう言うと、平野くんはちょっとムッとして、今日何度目か、またもや僕を驚かす。
「タカシくん、覚えてないのな。 俺お前と幼稚園一緒だったんだぜ」
目を丸くしてヤマトくんを見ると、ヤマトくんは嫌な顔をしつつ、うなづいていた。
僕はいつもヤマトくんと一緒だったから、平野くんの存在に気がつかなかったみたいだ。
「幼稚園の時は、俺、体小さくてさ。ヤマトによくイジメられたんだぜ。んで、いつもタカシくんが『弱い者いじめはダメ!』ってヤマトを叱っていただろう?
俺は、いつもタカシくんに助けてもらってたんだ」
正直、僕はあまり覚えていない。
今、見上げるように大きな平野くんが小さかった、だなんて。
「タカシくん、始業式にな!これから、ちょくちょく3人で遊ぼうな」
ニィと笑って平野くんは帰っていった。
ヤマトくんは少しだけ気まずそうにしていたけど
「タカシ、風邪がなおったら、うちに来いよ」
恥ずかしそうにボソリと呟いた。
今年のクリスマスは結局、クリパには誘われなかったし。
風邪で寝込んで散々だった。
だけど。
だけど、この日僕は最高のプレゼントをもらったんだ。
この日を境に僕は、僕を好きになった。
そしてそれは、大人になっても続く僕の根っこの部分になった。
ヤマトくんや平野くんとの友情も、大人になってもずっと続くことになる。
でも、それはまた別の話。
いつの日かまた。
《終》
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