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コンロの上に、小さな鍋がポツンと置いてあった。
蓋を持ち上げると、水滴が一気に流れ出て、中にあるお粥にピチャと流れ込む。
あんまり食べたくない。
僕はそのまま蓋を閉じた。
なんだか、体が重い。
もう一度布団に戻ろう、そう思って台所から出ようとした時だった。
ピーンポーン
部屋のチャイムがなった。
とっさに廊下の先を見る。
意識を向けると、誰かの話し声が聞こえた。
玄関に近づいて扉の前で返事をした。
「は、い」
けれどその声は、自分でもびっくりするくらいのかすれた声だった。
ピーンポーン
チャイムがもう一度鳴って
「寝てるのかも」
という声が聞こえた。
僕はすぐに扉に手をかけて鍵を開けようとした。
その瞬間、扉の中央にある細長い新聞受けに、大きめの茶色い封筒が差し込まれた。
封筒が生き物みたいにズルズルこちら側に入ってきて、やがてポトッと、僕の足の上に落ちた。
「もう行こうぜ。ヤマトくんち行くの遅くなっちゃう」
「でも、黙って入れとくだけでわかるかなぁ。先生は、ちゃんと届けるように、って言ってたよ?」
同じクラスの子たちだ。これからヤマトくんちのクリパに参加するんだ。
プリントか何かが入っているんだろうこの封筒を、僕の家に寄って届けてくれたんだ。
ここまでのことを、僕はすぐに理解した。
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