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胡散臭いだろ!
二人の視線の先にいる老婆は着物を着ている。ボロボロの布をまとって大きな木のカゴをしょっている老婆は、とても薄気味悪い。ここは山の上のほうのはずだが、腰が曲がっている老婆はどうやってここまで登ってきたのだろう?そう思わせるほどに弱々しく見えた老婆は二人を見つけると近寄ってきてささやいた。
「ゴミを100個拾い、このカゴに入れなさい。そうすればアイテムをあげよう」
そう言って大きなカゴを二人に差し出す老婆。熱男と玲児は思わず顔を見合わせた。
「おいおい、胡散臭いだろ!なんだよ、この婆さん!ゴミ拾いしろってなんだよ、いきなり!ってか、すみません、俺たち道に迷ってるんです。街に帰る道分かりませんか?」
「このカゴにゴミを100個入れたら分かるだろう」
ああ、何ということか。よりもよって山で迷ってこんな胡散臭い老婆にゴミ拾いのタスクを押し付けられるとは。しかし、玲児は楽しそうである。
「とりあえずやってみようぜ。アイテムもくれるらしいじゃん。確かにこの山はゴミが結構落ちてるもんな!」
「ああなんでだよ?くそ面倒くせーなー!ほっといて早く山を降りようぜ!」
熱男は乗り気ではなかった。そして老婆はそんな熱男の態度を見逃さなかった。よぼよぼに見えた老婆は突然カッと目を見開き、少年二人に向かって大声で叫んだのである。
「このクソガキが!てめえみてえな何の能力もねえ社会のクズは!大人の力で生かされてることにすら気付けねえんだ!もっとてめえ自身が社会のゴミだってことに気付けクソが!せめて山のゴミぐらい拾え、このゴミクズ小僧ども!」
激怒した老婆の叫びがこだまとして山の彼方まで響いた。ああ、老婆は力の限り怒鳴ったのだ。それほどに、熱男の言動は軽率だったのだ。まったく軽装なこのバカは、言動も軽率でいけない。若さで許される問題ではないのだ、軽率な発言というものは。
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