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てめえらは不合格だ!
大男は2メートルぐらいありそうな背の高さだ。山伏のような恰好をしている。
「なんだこの赤ら顔でしかめっ面の大男は?って思っただろう?この男は私の息子だ!」
老婆が山伏姿の息子を紹介した。山伏は、背中にしょっていたカゴをドサッと地面の上に置いた。秋の紅葉真っ盛りの静かな山の中。老婆が持っていたカゴより一回り大きい巨大なカゴが地面に置かれた振動で、赤や黄色の落ち葉が宙に舞った。一瞬の静寂と緊張感。少年二人はお互いの顔を見合わせる。
「てめえらは不合格だ!」
老婆がそう叫ぶと、山伏が玲児の首根っこをつかんで持ち上げる。あまりに唐突な出来事にジタバタともがくことしかできない玲児。玲児はいとも簡単に山伏のカゴの中に放り込まれた。
「このクソガキはもらっていく!」
老婆はそう叫ぶと熱男の腹に蹴りを入れた。あまりに唐突な展開に驚き、よろめく熱男。老婆はゴミの入ったカゴを背負って、山伏は玲児が入ったカゴを背負って、非常に速いスピードで走り出した。瞬く間に山道を駆け下りていく老婆と山伏。
「玲児を連れ去る気か!この野郎!玲児を返せ!」
熱男は叫んだ。その叫びは空しく山に響いた。老婆と山伏の後を追って走り出す熱男。秋の紅葉が太陽にまぶしく光っている。どこか遠くで川のせせらぎが聞こええる。しかし、今の熱男に秋の山の風景を楽しんでいる余裕はない。ボロボロの謎の地図を握りしめながら、熱男は懸命に山道を走る。
老婆も山伏もやたらと足が速い。この山道に慣れているのだろう。ものすごい勢いで山道を駆けていく。慣れないデコボコの山道を走るだけでも、熱男にとってはつらい。
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