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ライターだった。
青年の寒さで、かじかんだ手ではライターの点火部をこすることは容易ではなかった。
それでも、青年はくり返し指を動かし続けた。
続けることで青年の指の血行が巡り始めたのだろうか、指は回転部分の小さな溝を的確にとらえ始めた。
小さな火花が散った後、
「ポッ」と小さな音が響き、かすかな炎が、またたき始めた。
「いったい、だれがこのライターをプレゼントしてくれたのだろうか」
青年はそんなことに思いを馳せようとした。
しかし、その思いはまるで、外界の嵐に吹き飛ばされるように、答えには到底、届きそうにもなかった。 (了)
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