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「行くぞー」
大男が地響きを立てるような大声で叫び、
「足を広げろ」
と命令した。
男が足を広げると、大男が膝を地面に落とし、土下座するように頭を下げた。
そして、頭を男の股の下に突っ込んできた。
男の体はバランスを失い倒れそうになったが、ぐらぐらと揺れながら視界が広がっていく。
まるで自分が大男になったような気分だ。大男が慎重に川に足を踏み入れていく。
「いよいよ、俺は死ぬのだ」
男の中に感傷的な気分が高まってきた。
川の中程まで来たとき、大男が振り返り
「さあ、投げ返すのだ」
先程までいた岸辺を指差し命令した。
男は大きく振りかぶりライターを投げた。
ライターは頼りなさそうではあるが放物線を描きながら、岸辺に着地した。
それを確認した後、男を肩車した大男は再び、あの世にむかって川の中を歩き始めた。
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