最後のプレゼント ~ クリスマスイブの夜に ~

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 2117年12月24日、青年は薄れていく意識の中で 「寝るな、寝るな、眠るとそのまま死んでしまうぞ・・・・・・」 そうくり返しつぶやいていた。    21世紀は地球温暖化の時代であったが、22世紀にはその反動で氷河期に近い時代を迎えていた。  青年は遭難した山岳隊を救助するために日本アルプスへ向かったのだが、予想以上の悪天候に巻き込まれた。青年以外に4人いた救助隊のメンバーたちの姿も吹雪の中では見つけようもなかった。  数時間、歩き続けやっと山小屋を見つけ、命からがら入り込んだ。山小屋の中には暖炉があり、その近くには(まき)が積み上げられていた。  テーブルの上には2つのマッチ箱が置かれている。青年は震える手で1つ目をつかみ、振った。音がしない。開けてみると中は(から)だった。  祈るような思いで2つ目に手を伸ばしつかんだ。  軽い・・・・・・。    音がしない。  やはり空だ。  絶望感が、したしたと青年を包み込んだ。  
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