とある誕生日の桜守スタッフたち

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「んー…じゃあ、現地行かないと買えないヤツとか」 「ご当地限定か」 「しかもアンテナショップとか通販でも買えないヤツね」 「ハードル高いな!」 というか誰が現地まで買いに行くんだよ、という晴海の言葉で、雨宮の提案も却下される。 「円花さんたちは、何をプレゼントするのでしょうか…?」 「円花さんは、手作りバースデーケーキで、風雅さんは、なんか羽鳥さんに似合うイヤーカフあげるとか言ってたような…」 「月白さんは、甘味に合うお茶を見つけたから、それにするって話しを前にしたなぁ」 あれでもないこれでもないと、片づけ片手間にしばらく議論していた晴海たちだが、疲れてきたのか、ちょっと休憩、と呟いた雨宮が話題を変えた。 「クリスマスかー…ユキちゃんって、サンタクロースとか信じてた?」 「えっ…子どもの頃は、本気で信じていました、ね」 家に煙突ないよ、どうしよう、とか、懐かしむように微笑みながら語る深雪に、晴海と雨宮も互いに顔を見合わせて笑みを見せる 「俺たちも信じてたよな~」 「ボクは別に…時雨はすごい信じてたけど」 時雨は雨宮の弟である。 視線をそらしながら、そっけなく答える雨宮を晴海は笑いながら小突く。 「――で、東雲は?」 クルリと首を巡らせた晴海は、厨房での片づけが一息ついたのか休憩室の入り口に姿を現した東雲に、唐突に話の矛先を向けた。 「子どものころサンタクロース、信じてた?」 晴海に便乗して、茶化すように唇の端を釣り上げながら訊ねた雨宮に、東雲はいつものように眉間にしわを寄せながら淡々と答えた。 「…“三択ロース”とは、何だ? 肉の部位か?」 東雲の真顔の返答に、一瞬、沈黙が休憩室を支配した。 最初に立ち直ったのは晴海だ。 「…え、東雲それ、本気で言ってるのか? 冗談か?」 「…違うのか」 眉間のしわを深くしてわずかに首を傾げた東雲に、目を丸くした深雪がおそるおそる訊ねる。 「…東雲くん、サンタさんをご存知ないので…?」 「…そうか人名か。有名人なのか?」 有名人とかそういう話じゃないから、と呆れたように呟いたのは雨宮だ。 「えー今時、サンタ知らないとか、何なの? まさかしのっち、クリスマス知らないとか言う?」 「うちは和菓子屋だからな…外国の風習とは、縁がない」
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