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あ、これって。
「伊緒さん、もしかしてこれ、オカリナですか?」
涙型をした白い楽器は紛れもなくオカリナだった。
素朴でやさしげな音色は幾度か耳にしたことがある。
伊緒さんがオカリナを吹くとは知らなかったのだけど、なんだか彼女のイメージにぴったりで嬉しくなってしまった。
「う……、あ……。そう……、です」
ところが伊緒さんの反応は珍しく歯切れが悪く、どちらかというと"しまった"的な顔をしている。
すこうし不思議には思ったけれど、ぼくは悪気なく何か曲を吹いてほしいとリクエストしてしまった。
最初はいやだいやだ恥ずかしい、と抵抗していた伊緒さんも、やがてぼくの熱意に押し切られる形で観念し、
「では、お耳汚しを」
と、優雅にオカリナを構えて静かに奏で始めた。
ずー ぽー ぴー
ぽんぽぴー
ぽんぽぴー
ぺー ぺー ぽん
ぷーぷ ぴー
ぷーぷ ぴー
あろうことかその曲は、かの有名なシスの暗黒卿が登場する時のBGMだった。
インペリアル・マーチ。
どうかあのメロディラインを思い浮かべながら、もう一度読んでください。
ぼくは驚愕した。
とんでもなくかわいい。
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