玉砕のそのあとで2

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何だこれは。何なんだこの茶番は。 フった女子のアフターケアか何かだと思うが、それは本当に迷惑極まりない。 ふん、このイケメンが。後腐れなく終わらせるために再度呼び出すなんて、やることなすこと全て卑怯だ。だがそこがいい。 「振ってないよ、俺。」 「へ?」 「今井が振られたって勘違いしてるだけ。」 いきなり耳に届いたその重低音に驚いて、床から目線を上げた。 視界に入ったのは、もう制服を着る義務なんてないのに真黒の学ランに身をつつんでいる、均整のとれた体の男子。 やばい、カッコよすぎる。鼻血吹いちゃう。 なんて考える私はきっと頭がイカレてる。 いやしかし、もう本当に勘弁してもらいたい。 表面上は失恋から立ち直ったように見せかけているが、実はいっぱいいっぱいだ。 今だって、『もう会えないと思っていた先輩にまた会えるなんて嬉しい!』と私の乙女心は叫んでいる。 重症である。恋の病につける薬などないのだ。 慌てて素敵過ぎる先輩から目を逸らし、ナイナイと顔の前で手を左右に振った。 「いや、だから嘘つかなくてもいいですって。」 「嘘じゃない。」 うそじゃない?うそじゃないって何が? あ、分かった。ドッキリ?ドッキリでしょ? あれだ、きっと日向先輩の悪友が「ドッキリ大成功!!」とかのプレート持って現れるんだ。それしかない。そうに決まってる。 「いや、ドッキリでもないから。悪友とか来ないから。」 「え!?なんでそれを!」 「さっきから、口に出してる。」 「うわぁ」 なんたる失態、はずかしい。私は顔を真っ赤に染めた。 ふっと笑う先輩を視界の端でとらえたが、それは見ない振りをした。 …気を取り直して。 ドッキリでもないとすると、あとは何だ? 「えっと、他になにが…あ、分かりました。ハンカチですね。」 「ハンカチ?」 「あの、あの時お借りした、青い…」 「ああ、あれ。」 たった今思い出したように、先輩は言う。 私は机の上に置いていたカバンの中から、きちんと洗ってアイロンをかけたハンカチを取り出した。 …失恋した後、机の上に大切に置いて宝物としていたのは内緒だ。 「お借りしました、ありがとうございました。」 「ん。」 「じゃあ私はこれで。」 「待て。」 ハンカチを渡した後手を素早く引っ込めて、踵を返そうとしたが、案の定制止された。 ちっ、このまま逃げようと思ったのに。 .
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