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「そうですね。思い出に浸ったり夢を見たりするのはおしまいです。答えを出さないといけませんから」
ふいに冷たい風が二人の間を吹き抜けた。真夏には似合わない冷たい風が。
「……夢は優しいですから傷付かないってわかったら甘えちゃいますよぉ~それに夢の中なら私は幸せなのでぇ~」
「夢に逃げることは幸せではありません。現実から目を逸らしたってなにも変わらないんです。だったら少しでもその夢を現実にしようと努力するべきです」
「叶わない夢があるのは知っていますからぁ~叶えた人がいる分だけ諦めた人がいるんですぅ~私はきっと諦められずに抱き続けるんですよぉ~」
「それなら僕の夢への努力を受け止めてください」
「なんですかぁ~?マジメな話なら余所でお願いしますぅ~」
「好きです。姫のことが誰よりも大好きです」
「……へ?」
なにを言われてもとぼけるつもりだった姫だがあまりに現実離れした言葉に全てが止まってしまった。
「たしかに夢を見るのは楽しいですけどそれじゃあ夢はいつまでたっても夢のままです。だったら僕と全てを現実に変えていきませんか?」
「……え?え?えーっと……え?」
思考停止から復帰したものの突然の出来事による混乱と投げ掛けられる言葉の数々に頭はショート寸前だった。
「僕と付き合ってください」
極めつけはこの言葉。その刺激はあまりに強すぎた。
「ぁ……ど、どうしてですかぁ~!?」
「えっ、え?」
「どうして私なの!?」
理解も納得も感情も追い付かずとにかく怒った。怒ってるわけじゃないけどもっとも手っ取り早く出た感情表現が怒りだった。
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