初めての夢、夏の終わり

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「どうしてってそれは……言うの恥ずかしいですね」 「そんな気持ちでコクったの!?」 「そ、そんなことはありません」  膨らみかけた甘い雰囲気はどこへやら。焦る男と怒る女。これが告白現場だと言われてもにわかに信じがたかった。 「だったら教えてよ!」 「姫は優しいですしマイペースですけど、気遣いができます。それにとても一途じゃないですか。恋に恋する乙女って感じでいつもキラキラと輝いていました。そんな所に僕は「マイペースってほめてるの!?」 「ツッコミが遅い!だいぶ過ぎてから言われてもテンポが悪いですよ」  これじゃあ告白より漫才。そんな冷静な思考が頭のどこかにあって姫の熱を徐々に冷ましていく。 「ご、ごめんなさい。取り乱しました」 「い、いいえ。突然好きなんて言われたら驚きますよね」  これでやっとまともに話が出来ると思ったのもつかの間、姫の顔が赤くなっていく。 「す、好きって……だ、だいたいわ、私ってあれじゃないですか!ヒロイン的なポジションじゃなくてヒロインの親友で影から助言をしたり、親友の背中を押して自分は影で涙を流すタイプじゃないですか」 「いや、全然影じゃないですよ。めちゃくちゃ本編に出てたじゃないですか。むしろひとりでお話持ってたこともありますよね」 「そういうディープな部分は触れないで!私はヒロインの親友のポジションなの!」 「でしたらこれはきっと……ヒロインを選ばなかった物語にもならないすみっこの話ですね」 「すみっこの話……」 「それでも僕は姫と一緒にいたいです」 「本当に?本当に私でいいの?」 「姫じゃないといやです。僕にとってのヒロインは姫ですから」 「っっ!……ありがとう、ございます。こんな私を……物語のすみっこの私を……見つけて、くれて……ありがとう、ございます」  目に涙を浮かべた姫は雄仁の胸に飛び込み、強くしがみつくように抱き付いた。 「僕の方こそ待っていてくれてありがとうございます」  腕の中の小さな体を大事に抱き締めた。
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