15人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、それならデタラメな住所書いてるからここに届くはずないだろう……んん? なんだこれは!?」
それに、やはり微塵も悪びれることなく、平然と自分達が嘘吐きであることを根拠に反論するメガネの青年――玉篠朱男は、受け取ったそのハガキの差出人名を見て驚きの声をあげた。
「ん? ……ええっ!?」
同じくハガキを覗き込んだ鷺野も、思わず目を丸くして唖然とする。
なんと、差出人の部分には〝サンタクロース〟と書かれていたのだ。
「ね? なかなかウケるっしょ? 僕も見た瞬間、ポカーンとしちゃったよ」
二人の反応を見て、それを運んで来た八尾は自慢するように笑顔を浮かべて言った。
「なんだ、ただの悪戯か……わざわざこんなもの送りつけるとはご苦労なことだ」
そのどう見てもありえない人物名に、玉篠は当然、そう判断を下す。
「にしても、ずいぶんと楽しい悪戯じゃないか。なになに……あなたの名前と、欲しいプレゼントを書いてください……か。まさに〝サンタさんへの手紙〟ってわけだ」
そのハガキの往信部分にはそんな文言がプリントされており、鷺野はまだ純真無垢だったこどもの頃に、サンタクロースに宛てて書いたプレゼントのリクエストを思い起こした。
「八尾、おまえ、こどもの頃、サンタさんにどんなもんお願いした?」
なんだか興をそそられた鷺野は、ハガキを玉篠から奪うとペンを取り出し、そんな質問を八尾にぶつける。
「あ、僕はだんぜんラジコンカー! 小さい頃から車好きだったからね」
「八尾はラジコンカー……と。じゃ、玉篠は?」
ノリよく手を挙げて答える八尾の名前とリクエストをハガキに書き込むと、次に玉篠へも同じことを鷺野は問う。
「フン。実にくだらん遊びだ……そうだな。確か鉄道の模型をよくねだっていた。あの電動で走るヤツだ」
小馬鹿にすうように鼻で笑い、まるで興味なさそうな態度を玉篠は見せながらも、やはりつられるように幼い頃を思い出し、天井を見上げながらそう答える。
「じゃ、玉篠は鉄道模型をください……と」
「そういうおまえはどうなんだ?」
ふざけて、こどものような言葉使いで聞いたリクエストを再び書き入れる鷺野に、今度は逆に玉篠の方が尋ねた。
最初のコメントを投稿しよう!