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最悪だ。
雪道を進んでいた車が、急に停まったかと思ったら、運転席でハンドルを握る紅虎が、「まいったな。迷ったっぽいわ」と呟いた。
辺りはすっかり夜の闇に包まれていて、普段は人通りの少ない別荘地であるからか、街灯も少ない。ヘッドライトが示す先には、雪の壁しかない。どこが道なのかも解らなかった。
「迷ったって、ナビは? ロッジの場所、登録してないの?」
「してない。だって、これ、鳩羽の車で、俺のじゃねぇもん」
「えぇ、そんな、どうするの? ナビの履歴は残ってないの?」
「……残ってないな。鳩羽家のロッジだから、ナビいらないんだろう。皆で来た時は、アイツが運転してたし、俺、来る時は寝てたからな」
反省する素振りも見せずに、紅虎は淡々と述べる。
「寝てたって……じゃあ、何で紅虎が私を迎えに来たの? お兄ちゃんか、鳩羽さんが来てくれたらよかったのに」
「うるせぇな。駅まで行けたから、帰りも大丈夫だと思ったんだよ。それに、みんな酒飲んじゃってるから、俺以外が運転するの、無理だったんだ。文句言うな」
「みんな飲んでるって、先にパーティ始めちゃってるの? ひどーい!」
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