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ざぁぁ
湯に打たれる白い肌。とても弱くて、夏でも長袖が欠かせないし、とても敏感でちょっとした触れ合いにもゾワゾワと鳥肌を立ててしまう。握手を求められるのも、肩を組まれるのも苦痛であるため、無意識に友人との関係に一線を引いてしまう。気付いたら心から友人と言える存在などいなかった。彼女が出来たところで、抱き合ってキス……想像しただけて、薄皮にくるまれただけの己の神経がゾワゾワと嫌な悪寒が背を走る。悠の対人関係にも影響を大きく及ぼすほどの、類稀な敏感なその皮膚。他人との接触には嫌悪しか感じたことのない感覚なのに。
白い肌に散らされた赤い痕を見て、溜め息を漏らす。
リョウの長くて美しいのに男性らしい指先がつ……といたずらに悠の躯に触れるとそれだけで、衝撃を覚えるほどのあまい痺れが全身を貫いた。もっと触れて欲しいのに、これ以上触れられたらどうなるかわからなくて怖い。敏感すぎる薄皮に包まれた神経が、初めて不快以外のあまい衝撃を覚えた。
蜜で出来た甘すぎる深い海にずぶずぶと嵌まって、気付いたら一人で生きていけないどうしようもない生き物にされていそうで怖い。
あの氷のように冷たい蒼い瞳が、悠を見付けると優しく蕩けるのはわかっているけれど、店には本気で彼を狙う沢山の美しい女達が居る。自分がその誰より魅力的だなんて悠には到底思えない。いつか彼から離れなければならない時が来たときのことを考えると、リョウの気持ちを聞いて、悠の気持ちを打ち明けて、二人の関係に名前を付けてしまうことが、怖い。だから、このままでいいのだ。
「悠、大丈夫か?」
浴室の外から声が掛かり、びくっとしてしまう。
「は…は…はいっ!」
悠の返答にくくっとリョウは笑うとバスタオル、置いとくよと続けた。
どきん……どきん……
心臓がうるさい。DeepBlueのカウンター越しにリョウが初めてのキスを悠にしてから会うたびに、繰り返キスと愛撫。店で会うだけの関係から、土曜日と日曜日にはリョウの車が悠を迎えに行き、二人きりで過ごす関係に変わっていた。
そう。端から見るとすでに二人の関係には名前が付いているようだが、嘗てそんな存在が居たことの無い悠には、既に後戻りなど出来ない深いところまで来ていることに、気づけない────
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