Deep blue

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 悠は目の前に置かれた皿にゆっくりと手を付けながら、いつの間にかリョウの不思議な話術に引き込まれあれやこれやと話を引き出されていく。リョウはどんな悠の質問にも納得できる答えをくれた。とりわけ敏感な悠には生きにくい学校生活のことなどはリョウのアドバイスに従って以来驚くほどうまくいっていた。  いつもふ、と気付くとカウンターにはアルバイトのバーテンダーが入り込み、忙しなく入るアルコールのオーダーをこなしている。リョウはというと悠が来ると客のカクテルを作るのをすっかりやめてしまい、悠との話に興じている…といったことが多い。  美味しい軽食と悠の好みに合わせて作られたドリンクを飲みながら、予備校で習った分野について、講師が教えてくれなかった面白い雑学を混ぜた話をしてくれるので、悠はうっとりと聞いてしまう。  夢中になって話を聞いては、悠の質問に答えてもらう。また勉強の話の合間には、煩わしい人間関係の悩みなんかにも的確に答えてくれる。  美しいリョウに見蕩れながら過ごす楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。  夜も更けて行きカウンター奥のアルバイトの青年達の忙しそうな様子に気付いて悠ははっとする。 「あの……ごめんなさい。俺、仕事の邪魔ですよね?」  おずおずと告げると、 「邪魔じゃないよ。それに奥ゆかしい君は店が空いている月曜と水曜にしか来ないじゃないか」 と、優しく笑う。 「空いていると言っても、それでも此処はお客さんがたくさん来ていて忙しそうです……」 と、店をくるりと見渡すと「俺がいいって言ってるんだから、子供はそんなこと気にするんじゃないの」  めっ、とちいさな仔を叱るようにリョウは悠を見る。  そんな表情も美しく、ぽやんと悠はリョウを眺めてしまうが、時間は刻々と過ぎてゆく。 「終電の時間……もう行かないと………」 悠は席から立ち上がる。 「上に俺の部屋があるから、泊まって行っても構わないから閉店までたまには居ればいいのに」 悠の指環が嵌まった指先をつい……とリョウの長い指先が辿ると、  それだけで悠の躯は電流が走ったように、びくりと背筋が震えた。  そんな悠の生れつき色素の薄い茶色がかった髪の毛をポンポンと軽く撫でた。 「ごめん、ごめん…悠は皮膚が薄いから敏感すぎて触れられるのが、苦手なんだよな」  そう言って此処なら大丈夫?と悠の茶色の毛先を緩くからかうように引っ張るとそれだけで、ぶわりと首筋が淡くざわめき立つのが見てとれたが、リョウは気が付かないふりをして何度も軽く引っ張る。指に毛先をくるくると絡めて軽く引くと、髪からは果実のような甘酸っぱい香りが漂う。   指を髪に絡めて軽く引くだけで、どんな声が出そうになっているのやら……          
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