六条くんの盲執

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「ねえ見て、凄いよこれ!」 「へえ、どれ?」 知らんぷりして文字を追う。 よくおみくじの始めには昔の和歌が書いてあるものだけど、これは本当にミラクルだった。 『(あらた)しき年の始めの初春の  今日降る雪の いや()吉事(よごと) 万葉集 巻二十  大伴家持(おおとものやかもち) 〈意味〉新春に降る今日のめでたい雪のように、今年もたくさんの吉事がありますように』 「私のお願い事とおんなじなの! 凄い凄い、ねえ凄いね!?」 「ほんと凄いね。きっと叶うね、蛍光ちゃん」 「六条くん、大好き!」 ぎゅっと抱きしめられる至福の感触。 ああ、今なら死ねる。 大丈夫。 こんなおみくじあっても無くても、君の行く道に困難な壁が現れたときには、ボクが全部先回りして憂いはみんな無くしてあげる。 君の未来の幸も不幸も、全てはボクの思惑しだい。  君がひとたびこうと願えば、全てその通りになるんだから。 ……なんてこと、口が裂けても言えないけどね。                  敬具       〈終〉
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