六条くんの盲執

3/17
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「待った?」 「えっ!? う、ううん……今き、来たとこ、ところ……」 声までうわずって、寒そうだなぁ。そのやけに薄いマフラーは、ほら思った通り夏物だよ。 なんでコーディネートのときに気づかないかなぁ、カメラごしでもボクの目にははっきりと分かったのに。 ほんと、おっちょこちょいなんだから。 「あの六条くん、頭に草ついてるけど、いつからその、その中にい……あんっ」 君の凍えた手をとって、意気揚々と参道へ向かう。 うん、参道……さんどう……? 産道……マズい鼻血が出そうだ。 ボクにこんな日が来るなんてまだ夢みたいだよ。 去年の高二の春、同じクラスの君に心奪われてからもう八ヶ月も経つんだね。お勉強はよくできるのに、抜けてて笑顔が可愛すぎる君はクラスの野郎どものアイドルだった。 ボクも努めて話しかけたし、たまに告白されるくらいはイケメンらしいけど、それだけじゃ弱いから。 クラス1のイケメンに君が心揺らぎそうになったときなんか、丑の刻参りで有名な貴船神社に夜な夜な通って、境内の木の腹に五寸釘で藁人形打ち付けて野郎を呪ったっけ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!