六条くんの盲執

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もちろん人事をつくして天命を待つばかりじゃ生ぬるい。 前もって君から拝借しておいた空色の愛らしい毛糸のパンツーーあればお気に入りだったけれども、背に腹は代えられないからーーを、野郎の机の中に仕込んで、首尾よく野郎が君に変態呼ばわりされたときにはスカッとしたなぁ。 後はふさぎこむ君の弱った心につけこんで、そっと君の教科書を焼いて、無くしたとパニックになる君に自らの教科書を捧げたり、ある時は君の制服のスカートを失敬して、体育の後ブルマー姿でパニックになる君に、演劇部から借りてきたスカートをそっと差し出したりして。 物が不自然に無くなっても、おっちょこちょいの君は自分のドジだと信じて疑わない。 そのたびにボクが助け船を出し、優しく慰める。 そんな事を何十回も繰り返していれば、君がボク無しでは生きられない体になるのは火を見るよりも明らかで。 まるで泉の精のように代替品を差し出す遺失物の神=ボクは、いつしか緩やかに、君の彼氏の座へと収まっていった。
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