六条くんの盲執

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「去年は凶だったから、今年こそはって思ってたのにぃ……」 半ベソかいて溜め息をつく可愛い君。 いっそ食べたくなる気持ちにぐるぐると縄かけて、その華奢な掌に赤いポチ袋をちょこんと置いた。 「……え、なにこれ何で? ダメだよ嫌だよ、こんなの貰えないよぉ」 「お金じゃないから、安心して?」 にこっと笑んで、そっと頭を撫でてやると、 「そお? それなら……」 そろそろとポチ袋を開いた君が、はて、と小首を傾げる。 「あれ? またおみくじ……?」 さっきのこよりよりやや大ぶりのそれをつまみ出して、不思議そうにボクを見上げる。 「開いてみて」 「うん……」 ぴり、と控えめに糊をはがした君の瞳が、次はパッと輝く。 「大吉だぁ! ねえこれどこの神社のやつ!?」 「ここって熊野神社でしょ?」 「えっ、うん」 「熊野神社って、本家は熊野大社っていうんだけど……」 「知ってる! 三社あるやつだよね」 さすがは蛍光、日本史はバッチリだね。
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