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声のした方向を向くと、右隣50m先ぐらいに、女子生徒がフェンス越しに、校庭を見つめていた。
透き通るほどに白い真珠のような肌をした、学校内でも一番美人な女子生徒だ。
僕と彼女は、天と地以上の差があり、一応同じクラスであるものの、一度も会話したことがない。
ここでは、彼女のことを『スピカ』と呼ぶことにしよう。
スピカはフェンスを両手で強く握りしめ、自分の額をフェンスに強く打ち付けた。
「もう生きている意味なんてない。」
彼女から微かに、そう聞こえた。
フェンスを握る手は、より一層強くなる。
「どうしたの?」
僕は、何だかほっとけなくて、思わず彼女に声をかけていた。
彼女は、二重でまつ毛の長い可愛らしい目をまん丸にし、驚いたような顔でこちらを向いた。
「ごめん。いきなり声をかけてしまって。」
「びっくりした...。いつからそこに?」
「ずっとここにいたよ。」
僕は、女の子と話すのが久々だったから、ちゃんと目を見れず、淡々と会話をした。
スピカは、ため息をついて、フェンスを背もたれにし、座り込んだ。
「カッコ悪いところ見せちゃったね。」
僕は、必死に顔を横に振った。
「輝彦君は、優しいなぁ。」
スピカは、その綺麗な横顔を歪ませた。
コロコロと変わる表情に、僕は釘付けになっていた。
学校中の男子が彼女に惚れる理由もわかる気がした。
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