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小さい頃から全てが似ていた僕と拳次は、ライバルであり最高の親友であった。
しかし、僕達は似ているだけで同じではなく、そこに勝負ごとが絡むとほぼ僕は負けていた。
体育授業の100メートル走、勉強、女の子の人気。
でも、ボクシングこれだけは負けたくないと特別な思い入れがあり、勝ったり負けたりを繰り返した。
それが、20歳になった今もそれは続く。
高校卒業と同時にプロのリングに上がることを決意した僕達は、それぞれ別の階級であるが昔からお世話になっているジムに所属することにした。
いつか、世界のベルトを取ろうと誓った仲だ。
このジムのお手伝いにオーナーの娘の幸子がよくきてくれた。
ジムの系列会社である運送屋の事務員をしながら夜は練習生の手伝いをしている。年も同じ20で実は高校も同じだ。
僕と拳次はプロのボクサーではあるがそれだけでは食っていけないので運送屋を普段手伝っている。
つまり、3人共同級生で同僚でジムに所属しており、仲が良かった。
高校卒業してすぐにプロ入りしたが、苦戦している僕と順風満帆な拳次で、明暗はくっきりとしている。
「3年目で日本チャンピオン挑戦かぁ。あいつはすげーなぁ」
事務所に貼られた次回の試合のポスターには、前座の試合も小さく書かれてあり、僕の名前が小さくのっていた。
「あんたも、しっかり一つ一つ積み上げて早く
チャンピオンなりなさいよ。一応家のダブル看板なんだから」
頭にタオルをかけられ振り向く。
「まあ、期待に添えられるように頑張りますよ。それよりさ、コーヒー頂戴な」
イスに座り退勤前に一杯くつろぐ。
「あれ?コーヒー苦いよ??クリームもついてないし」
「当たり前でしょ。あんた試合近いんだから節制しなさい。」
呆れたように。机にあった僕のオヤツも取り上げる。
「あっ!チョコレートと甘いコーヒーが練習前の俺のルーティングなのに!」
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