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「そんなルーティングやめちまえ!」
「何何?いちゃついてんの?」
拳次も仕事が終わり退勤前に事務所に顔を出しにきた。
「お嬢にイジメラレてるんだよ!拳次君チョコレート取り返してきてよ!」
「純の仕事終わりの楽しみだし、ゆるしてやれば?こいつの今度の試合の階級ならほとんど減量しなくていいみたいだし」
「しかたない」
拳次のフォローもあり渋々と、半分だけチョコレートを返してもらう。
「本当に信じられないなぁ。純も拳次とほとんど同じ体格なんだからまだまだ体重絞れるのに、拳次の2階級上なんて..」
困ったように幸子はため息をつく。
「だって拳次と同じ階級でやるわけにはいかないし、二つ空けときゃあ色々やり易いしさ。」
拳次の減量が苦しいことは知っている。
俺が一個上の階級だとあいつは必ず無理をして続ける。
そこまで僕はあいつに甘えたくないのだ。
「ふふ、まあ俺のパンチならもう2階級上のやつにも通じるから心配するなよ。」
コーヒーを飲み干し、楽しみの練習へと席を立つ。
「あまり否定できないのがくやしいわね」
幸子はコーヒーカップを片付けながらも嬉しそうだった。
事務所を出て徒歩5分の場所にあるジムは活気がでている。
「あっお疲れ様です。」
俺たちより先にすでに練習している先輩や後輩に軽く挨拶をして、自分もすぐに練習に入る。
期待されてる拳次にはトレーナー達熱い視線
僕は練習メニューをサボらないでやってるかの確認程度、最近見捨てられてるのかと不安になるレベルだった。
練習の佳境になり「スパーリングやるからリングに上がれ」
拳次の相手に指名され意気揚々とリングに上がる。
ランクは離されているが、階級が上の分なんとか対等近くにはこなせる
繰り出されるジャブの一発一発が鋭く刺さる。
基本に忠実な彼のパンチに目を奪われる。
だが、サンドバックになるつもりはない。
相手のパンチを受けながらも手を出す。
数発に一度かろうじて届くパンチも拳次のガードにしっかりと阻まれる。
ぼかすかぼかすかと殴られると下の階級相手とはいえ、ダメージは重なる。
一発の力ならこちらが上だとギャンブルに走りガードを下げる。
いくらでもこいと迎えうつ構えをする。
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