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プロローグ
「ねえノア」
白銀の世界をいつものように散歩している時の事だった。突然、後ろを歩いている普段無口で兄の後ろを付いてくる弟“チャーリー”が話しかけてきた。
いきなり話しかけられたのでノアは驚きながらも振り向く。
「なんだ?めずらしいなお前が散歩の最中に話かけてくるなんて」
「ノアも行っちゃうんだよね?」
「まあ、そうだな。それがうちの……テイラー家のしきたりだし」
チャーリーの言う「行く」というのは家を出て、旅に出るということ。
しかし、ノアはしきたりの詳細を知らない。テイラー家の長男は18歳になると一人で旅に出される。期間は最低でも一週間、一週間を過ぎると一度戻りそこからまた旅をするか留まるか決断を迫られる。
ノアの記憶が正しければ、少なくとも100年以上前から続くテイラー家の伝統らしいが一度も旅に出た人間が戻ったという報告は無かった。
「でもさ、旅に出た人たちって皆帰ってこなかったって言ってたよ?お兄ちゃんももしかしたら帰ってこなかったら僕……」
チャーリーが言っている帰ってこなかった人たちと言うのは、二度目の旅に出た人たちではなく一週間という最初の旅で戻ってこなかった人たちの事だ。
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