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「……駄目だ……落石で坑道が塞がれている」
「……何だと」
カトレアのその言葉に菖蒲の顔が大きく歪む。
この短時間で坑道としての機能を失った古道は、錆びたレールの跡だけを残し完全に閉ざされていたのだ。
「……」
それを見た菖蒲が何やら思案顔へと耽る。
ーー何だこの違和感は。
そんな菖蒲の思考を中断させるかのようにセロシアの方から怒声が鳴り響いた。
「きますぞッ!!」
振り向いた菖蒲の眼界に入り込んだのは、肌の色を真っ赤に染めた黒い腕の存在だった。
「……」
本能が警鐘を鳴らすのを肌で理解する。
「セロシアさんこれを」
「……これは」
そう言って菖蒲は今の今まで大切に脇に抱えていた巨大な本をセロシアへと手渡した。
「“俺の×××××だ”。暫くの間エスコートを頼む」
直後、背に白い鳥を乗せた菖蒲がその地を飛び跳ねた。
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