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ーーチャンスは一回。
「……悪いがもう一度だけ我慢してくれ」
菖蒲はそう呟くと、ホワイト・ウォーブラーの羽をもう一枚引き抜いた。
そんな菖蒲をターゲットと認識したのだろう、巨大な腕が轟音を引き連れながら振り下ろされていく。
ーー奴の狙いは間違いない俺の頭部だ。
狙いが分かっていれば回避する事はそう難しい事ではなかった。
腰を大きく下げる事で地を這うような格好となった菖蒲の頭上を、質量を伴った肉塊が高速で走り抜けていく。
(ーー懐に入り込んだ)
そのままの低姿勢で一気に腕が伸びる先へとその距離を潰していく。
「いた」
すると、血のような真っ赤な胴体の中心に、太い血管の集まりのように脈打つ心臓の姿をその眼に捉える。
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