593人が本棚に入れています
本棚に追加
「……借りは返しましたぞ菖蒲殿」
「え」
直後、赤い巨大な怪物は世界に溶け込むかのようにその身体を光の粒子と化して音も無く霧散した。
きらきらと夜空を彩る流星群のようなそれは一枚の絵のようにとても美しかったーー。
「……終わったのか」
先程までの巨大な化物が消滅した事を認識したカトレア達が呆然といった様子でとぼとぼと近付いてくる。
「いやまだだ。アレとは比べものにならない程の脅威がまだこの近くに潜んでいる」
菖蒲のその鬼気迫る表情にカトレアの顔が一気に青ざめていく。
そう、あんな雑魚とは比べものにならない程の化物の中の化物がなーー。
そんな時、菖蒲は不意にある懐かしい光景を思い出す。
絶対的な剣技を操る若き勇者に輝くような美貌の魔法使い。
そして数多の武器を使いこなす伝説の武人に名もなき聡明なる大賢者。
もしアイツらが今ここにいれば奴にも勝てたのであろうかーー。
菖蒲は柄にもなく破顔すると静かに立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!