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「それにしてもコイツがなかったらどうなってた事か。このレシピを残してくれた賢人に感謝だな」
そう言って優しく触れる大型の乗り物は、外見上はただの荷馬車にしか見えない。
しかし、この荷馬車は“特別”な力で作られており、その車体は嘘か誠か物質をすり抜ける能力を有していた。
全てが全てにその物理干渉を起こせるという訳ではないのだが、何の魔力も通ってないただの岩石くらいであれば、難なく通り抜ける事が出来る。
簡単にいうとこの荷馬車自体が別次元の乗り物みたいな存在なのだ。
「これでやっと拠点を築けるってか」
この僅か一日足らずの間にも関わらず濃すぎる体験を得た菖蒲。
未だにこの世界が何なのかの答えは出ていない。
むしろ、目が覚めた当初よりも謎が深まったと言っても過言ではなかった。
「……全く」
だが、荷馬車の中で治療を終えたホワイト・ウォーブラーの子供の柔らかい寝顔を眺めていると、今はそんな事はどうでも良い気分になっていた。
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