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「だが、宗三左文字が……」 カトレアは言いづらそうにその語尾を濁した。 それを聞いたセロシアがフッと小さく息を漏らし首を振る。 「いえ、あの刀はあれで良かったと思います。それに私にはまだこの菊一文字則宗がある」 そう言ったセロシアの手に握られていたのは、刀身を収める鞘が黒塗りのシンプルな一振りの名刀。 「……」 その刀を見たカトレアの顔が心なしか曇って見える。 居心地の悪い沈黙が続きカトレアが退室しようとしたその瞬間、セロシアがお待ちをと呼び止めた。 「何だ」と立ち上がったカトレアの前でセロシアが音もなく鞘から菊一文字則宗の一振りの刀を引き抜いた。 「ここで我が当主の恨み晴らさせて頂きます」 「ーーそうか」 それを耳にしたカトレアが少し寂しそうな声でそう呟いた。
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