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「……私にも分からぬ。だが、我が父が先の隣国との戦いでセロシアの仕え主を殺めたのは事実。お前は私を殺すのに十分な理由を兼ね備えている」
「……」
此方からはセロシアの顔は伺えないが、その後ろ姿は何処か過ぎ去りし過去を憂うような哀愁にと包み込まれている。
カトレアはさらに言葉を続ける。
「……許せとは言わぬ。否、決して許される事ではない。だが、私にも成さなければならない事はある。今回の騒動で失われた領土の復興、パラドックスなるものの掃討、そして“隣国サンテウォルテとの平和条約締結”」
それを聞いたセロシアがカトレアへと向き直る。
「どうだろう。私がこの夢を成就させるまで側にいてはくれぬだろうか。無理にとは言わぬ。いつでも不要と感じた時には切り捨てて貰って構わない。だから、どうかこの通りだ」
「……」
そう言って頭が地面に擦り付きそうな程にそのこうべを垂れるカトレア。
逡巡のあと、深いため息と共に徐にセロシアが語り出した。
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