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それを聞いた菖蒲が目線をカトレアの方へと差し向ける。
「……何」
しかし、カトレアは苦しそうに咳き込み二の句を継げずにいた。
そんな中、声をあげたのは意外な人物であったーー。
「……カトレア様を連れてお逃げ下さい。私の中へと何か得体の知れぬものが入り込んだようです」
「……何だと」
話すセロシアの額からは止どまる事のない脂汗が流れ続けている。
その尋常じゃない様子に菖蒲はある一つの考えが脳裏を過ぎった。
「……まさか」
菖蒲はセロシアの腕を解き放つと、肩口に幾重にも巻かれていた包帯へとその手を伸ばす。
血の滲んだ伸縮性に富む白い純綿糸を取り外していくと、そこには赤い脈打つ血管のようなものが浮かび上がっていた。
(パラドックスの幼虫と対峙した際の傷かッ……!)
それを視認した菖蒲が鬼気迫るといった様子でその声を荒げ出す。
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