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「……セロシアさん今すぐ魔力を一点に集中させてくれ。……早くッ!!」
「……ぐぅ」
菖蒲に頭部を殴られ一時的に自我を取り戻したセロシアが、指示に従うように体内にあるありったけの魔力を右手へと注いでいく。
それと同時に肩口でくすぶってた赤い脈打つ血管のようなものが、魔力の流れに沿うようにして右手へと移動し始める。
「菊一文字則宗……ケリをつけるには申し分ない名刀だ。そうだろ化物ーー」
菖蒲はセロシアの腰に下げられている黒塗りの鞘を掴むとそう口にしていた。
△
「本当に全て終わったんだな」
「ああ」
仮宿の一室に腰を下ろす菖蒲とカトレア。
その表情は疲れの色を濃く覗かせており、両者共に眼の下には立派なクマが見え隠れしていた。
だが、二人のその顔には自然と笑みが溢れている。
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