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あの第七坑道跡での戦いから数日が経った頃、オルレアン家の諜報部隊から、古都ブラルが正体不明の勢力によりほぼ壊滅状態に陥った事が伝えられた。
だが、幸いな事にその被害は最小限に抑えられたとのこと。
死者や負傷者が決して出なかった訳ではない。
むしろ未だに数多くの行方不明者を抱えているのが実情だ。
しかし、それでもあの限られた状況下で人々を迅速に避難させる事が出来たのは、カトレアとその優秀な部下達の力なくしては到底不可能であった。
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春を感じさせる柔らかい陽光が降り注ぐ中、黄色い果実を片手に何なら思案顔の菖蒲の姿がそこにはあった。
「……やっぱ、それなりに金が必要になりそうだな。いや、寝泊まりする場所が確保出来ただけでもここは良しとするか」
ここは、古都ブラルと王都を直線上に結ぶ中継地点にある小都市ギエラ。
蜜柑に似た黄色い果実が特産品として有名であり、両都市間を行き来する冒険者達の旅の必需品となっていた。
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