第十楽章+寂しかったから

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『あ……』 ふわりと風になびいた、ヴィラの瞳と同じ色のリボン。 ひとつにだきしめられた髪も、一緒にさらさらとなびきました。 『…洋服と一緒に、あげる。ヴィラが癒えて家を出て行くときが来たときは 一緒につれていっておくれ』 まるで、パーティーに行くかのよう、髪をまとめられたヴィラは、ずいぶんと格好よく見えます。 『今日の事は…何があっても忘れないし、頂いたもの、ずっと、大切にする』 そう、はっきりと言ったヴィラの言葉には恐怖がなく 強くにぎられた手のようでした。 ゲートまで、もう少し。 マッドロード区からかえる時間を惜しむよう、ふたりはゆっくりと歩きます。 ひとがいなくなって寂しくなった通りみち リオウがぽつりと口をひらきました。
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