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「……え?」
その言葉は、あまりに突飛で。みんなの頭に一斉に無数の疑問符が浮かんだ。
リェイルは淡々と説明を続ける。
「今日を含めて一週間、生徒同士で己の異能を活用して殺し合いを行いなさい。一週間以内に人数が16人未満になっていなかった場合は私が責任を持って皆様を殺しましょう」
「ちょっと待ちなさいよ!」
学園長の言葉に、赤いツインテールの髪をした、赤い瞳の少女が反論した。彼女は全体が赤かった。髪も目も着ているワンピースも。
彼女は目に怒りを宿して、学園長を睨みつけた。
「信っじらんない! あたしたちはこんな、殺し合いなんか望んでいないよっ! 欲しいのは『資格』だけだもん! さっさと寄越しなさいよね!」
彼女の言葉に、リェイルは柔らかに異を唱えた。
「そんな都合のいい話が、どこにありますか」
「そんなのないよ、わかってる! でもさぁ、何で殺しあいなわけ!? 『資格』が決まった人数しか貰えないものなら、成績順で良かった人から与えていくとかできないわけっ?」
「それでは面白くありません」
リェイルは笑っていた。嗤っていた、わらっていた!
綺麗に見えた紫の瞳は、ゆがんだ喜びに揺れていた。
彼女は赤髪の少女を見た。
「貴女はルールに逆らいますか?」
「当然じゃないの! あたし、この学校から抜けるから! じゃね!」
「できるとお思いですか!」
踵を返して歩き出そうとした少女。その背中に、リェイルは己の手を向けた。
次の瞬間。
グジャァァアア! 聞くにおぞましい音が、して。
「あ…………」
リェイルの手から伸びた漆黒の茨が、少女を背中から貫き、腹を裂いて一気に広がった。
血の匂い。腹を開かれ、飛び散った臓物。
身体をけいれんさせて、倒れ伏した少女。
あちこちで悲鳴が上がった。それはピースだって例外ではない。
血、肉、臓物。彼女自身から生まれたものが、赤い彼女をさらに赤く、紅く緋く赫く朱く染めていく。真紅の花が、一瞬にして咲いた!
リェイルのゆがんだ笑みが、遠くに見えた。
悪魔の如く笑いながらも、
彼女は告げる。
「――さあ、ゲームを始めましょう」
決して望まぬ殺し合いが、生徒同士の化かし合いが、呪われし運命の遊戯が、悲しみしか生まないゲームが!
今、幕を開けた。
生徒たちに逃れるすべはなかった。
――死にたくないッ!
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