2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
リェイルに案内されたのはごく普通の教室だ。しかし誰もが不意打ちされることに怯え、皆不安そうだった。エーテナが一度は激励したが、この恐怖が彼らの間から簡単に消えるということは、ないだろう。人間不信になったっておかしくはない。
だからこそ、チームを組むのだ。互いの命を預け合い、少しでも安心を得るために。
信じれば裏切られることもあるだろうが、信じて得られるものもまた大きい。
リェイルは言った。
「とりあえずはまず、皆様に自己紹介していただきましょうか」
そうしなければ何も始まらない。相手が信用できる人物かどうかもわからない。
最初はメンバーを代表して、わかったわとエーテナが進み出た。
「さっきも名乗ったけど、あたしはエーテナ。能力? 誰が教えますかっての。あくまでもあたしの意見だけれど、能力は下手に公開すると致命的になるわよ? 生き残りたいならそこは黙っておきなさい。以上」
彼女の紫の瞳には、真剣さが宿っていた。
自己紹介を終えたエーテナは、次は誰かと周囲を見渡す。その視線がつと、ピースの上に留まった。
ピースは困った顔をした。まだ話すことを決めていないのだ。しかしエーテナは促すように彼女を見る。ピースは困り果てて、ついつい助けを求めるようにソーマを見た。
彼女の窮状に気が付いたソーマが溜め息をつき、代わりに前に進み出た。
「ウィルド・ソーマ。剣を扱う騎士だ。よろしく頼む」
言って彼は、きっちりと礼をした。どこで覚えたものか、中世の騎士の礼みたいだった。彼の纏う銀色の鎧もあいまって、ピースには彼が本物の騎士であるように見えた。
ピースは彼が言葉をまとめるまでの時間を稼いでくれたのだと知り、彼に小さくお礼を言った。
大丈夫だな、と問いかけるように、青い瞳がピースを見る。
わずかな時間だったけれど、ピースはなんとか自己紹介の言葉を練り上げられたから。
笑って、前に進み出た。
「ピース・ピジョン、平和の鳩です! よろしくお願いします!」
◆
最初のコメントを投稿しよう!