第一ラウンド 小手調べの殺戮ゲーム 一章 手を取り合えば?

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 リェイルに案内されたのはごく普通の教室だ。しかし誰もが不意打ちされることに怯え、皆不安そうだった。エーテナが一度は激励したが、この恐怖が彼らの間から簡単に消えるということは、ないだろう。人間不信になったっておかしくはない。  だからこそ、チームを組むのだ。互いの命を預け合い、少しでも安心を得るために。  信じれば裏切られることもあるだろうが、信じて得られるものもまた大きい。  リェイルは言った。 「とりあえずはまず、皆様に自己紹介していただきましょうか」  そうしなければ何も始まらない。相手が信用できる人物かどうかもわからない。  最初はメンバーを代表して、わかったわとエーテナが進み出た。 「さっきも名乗ったけど、あたしはエーテナ。能力? 誰が教えますかっての。あくまでもあたしの意見だけれど、能力は下手に公開すると致命的になるわよ? 生き残りたいならそこは黙っておきなさい。以上」  彼女の紫の瞳には、真剣さが宿っていた。  自己紹介を終えたエーテナは、次は誰かと周囲を見渡す。その視線がつと、ピースの上に留まった。  ピースは困った顔をした。まだ話すことを決めていないのだ。しかしエーテナは促すように彼女を見る。ピースは困り果てて、ついつい助けを求めるようにソーマを見た。  彼女の窮状に気が付いたソーマが溜め息をつき、代わりに前に進み出た。 「ウィルド・ソーマ。剣を扱う騎士だ。よろしく頼む」  言って彼は、きっちりと礼をした。どこで覚えたものか、中世の騎士の礼みたいだった。彼の纏う銀色の鎧もあいまって、ピースには彼が本物の騎士であるように見えた。  ピースは彼が言葉をまとめるまでの時間を稼いでくれたのだと知り、彼に小さくお礼を言った。  大丈夫だな、と問いかけるように、青い瞳がピースを見る。  わずかな時間だったけれど、ピースはなんとか自己紹介の言葉を練り上げられたから。  笑って、前に進み出た。 「ピース・ピジョン、平和の鳩です! よろしくお願いします!」   ◆
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