2人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、彼は知った。
自分が人殺しをしてしまったということを。
全てを悟った男の顔が、青ざめていく。
「おれは……何を」
その後、悲鳴を聞いて駆けつけてきた先生たちが男を取り押さえて男は捕まり、男は裁判を受けることになった。最悪死刑になるだろう。彼はそれほどのことをした。
しかし華菜は不可解でならなかった。どうして自分が男に触れたとき、男は不意に殺意をなくしたのか。彼女を殺さなかったのか。
そしてある日華菜は知った。自分には、「触れた相手の殺意や敵意、害意を消す力がある」と。
以降、彼女は学校内で『救世主』として崇められるようになったが、彼女の親は「能力者を育てた親」として罵られ、嘲られるようになった。
華菜の力は平和の力。なのにそれは異能力。
異能力者は世間の異端。故に蔑まれる定め。
あの時。華菜は自分の力を使わなければ、死んでいたのに。
世間は彼女の自己防衛すら、「異能力者め」と否定した。
ただ一人――風道信互を、除いて。
彼だけは何も言わず、彼女には以降も同じように接した。
それは、一年前の変事。
華菜が中学校に上がって、一月が経った頃の――.
◆
最初のコメントを投稿しよう!