プロローグ ゲームの始まり

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「ようこそ七虹異能学園へ。私が学園長のリェイルです」  学園長リェイルはストレートロングの金髪に抜け目のない紫の瞳をした、細身の女性だった。黒いフォーマルな衣服をきっちり着こなした、まるで隙の見当たらない印象。しかしそれでもその口には穏やかな笑みが浮かんでいて、厳しそうな女性なのに威圧感を与えない。  彼女は首をかしげて、やってきた華菜を見た。 「あなたがここの新しい生徒さんですか? 名前は?」 「華菜です、花咲華菜」 「ああ、平和の力の」  名乗れば彼女はすぐにわかったようで、成程とうなずいた。 「今日来られたということは、コードネームとコスチュームをご所望ですね?」  彼女の言葉に、華菜はハイと答えた。  正直好きにしてくれて構わないのですが、とリェイルは言う。 「中には本名を明かしたくない能力者もいます。コードネームはそのための方便なのです。ですので好きに決めてくれて構いません。コスチュームも同様ですね。私ならば……自分の能力に準じたコードネームにしますがね。わかりやすいので」  その返答に、華菜は悩んだ。  自由に決めていいと言われると、かえって決めづらくなるものだ。  華菜は必死に記憶をたどる。  確か自分の能力である「平和」は英語でPeace、平和といったら鳩、鳩は確か、英語で……Pigeon、だったかと、平凡であった頃の勉強をかろうじて思い出す。  平和、鳩。平和の鳩。ピース、ピジョン。ピース・ピジョン!  ――決まった。  華菜は、花が咲いたような笑顔を見せた。 「決めました……。私はピース。ピース・ピジョン! 平和の鳩です」  ピース・ピジョン。口にして改めて、それが自分の名なのだと彼女は再認識する。  良い名前ですね、とリェイルはほめた。 「では、コスチュームの選択に行きましょうか。そうそう、外見はコスチュームに合わせて貴女の好きなように変化しますので、コードネームを名乗る前の貴方の正体は誰にも、わからないようになっています」  衣装室に案内しましょう、とリェイルはそっと立ち上がった。   ◆
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