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本当に様々な衣装があったけれど、平凡を自称する華菜――もといピースは、結論、平凡なコスチュームを選んだ。
よく言えば無難、悪く言えば陳腐。白を基調としたどこかの学校の制服にありそうなセーラー服に、頭にはオリーブの髪飾り。茶色のショートボブの髪に、白い長靴下、茶色の靴。
しかしその服装はシンプルでこそあったが、彼女にはよく似合っていた。
置かれていた鏡を見て、ピースは頷いた。
「これでいいです。学園長さん、どうもありがとうございました!」
彼女が動くたびに、頭につけたオリーブの葉が揺れた。
学園長リェイルはそれを見、優しく微笑んだ。
「これで必要なことは決まりましたね。一応説明しておきますと、この学校は全寮制。ですから一度入学しますとしばし、親元には帰れなくなりますがよろしいでしょうか?」
それくらい、ピースは覚悟のうちだ。
「大丈夫です! 正直、わくわくがたまらないんです!」
「気に入っていただけて何よりです。そうそう。あなたがこの学校の敷地を出たらコスチュームは自動解除されますが、あなたがこの学校の敷地にまた入ったとき、今回選んだコスチュームは自動で装備されます。コスチュームは変えることができません。……これで確定してもよろしいでしょうか」
ピースはもう一度、鏡を見た。
そこに映る姿は紛れもない、平和の使い。
「ええ、このままでいいです!」
「そうですか。それでは決めることは決めましたので、本日はお引きとりを願います」
「わかりました!」
リェイルの求めに従って、ピースもとい花咲華菜は、コスチュームを着たまま学園の敷地を出た。
彼女の身体が完全に広大すぎる学園から出たとき、着ていたコスチュームは光とともに消えて、彼女はいつもの普段着を着ていた。
どんな力が働いたのかはわからないが、今は異能者の時代である。学園長が異能者であっても、何らおかしいことはない。華菜は学園長もまた異能者であると踏んでいた。
しかし、そんなことはどうでもいいか。
華菜は学園の敷地を出て数歩歩いたあと、再び学園を振り返った。
その学園の敷地には広大な森があり、校舎はその森の奥にある。
不思議な雰囲気のする学園だけれども。そこが華菜の、新しい場所となる。
華菜は、入学式の日が待ち遠しくてならなかった。
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