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それから約一ヶ月。
ついに訪れた入学式の日、華菜もといピース・ピジョンは、森の中を校舎に向かって歩く道すがら、驚くべき人に出会った。
藍色の髪に青の瞳、中世の騎士みたいな鎧姿。
彼は彼女の知っている「彼」とは違ったが、宿す雰囲気は変わらなかったから。
思わず、彼女は呼んでしまった。
「信互く……」
「違う、ソーマだ!」
咄嗟にその言葉に反応した彼。彼はやってきたピースの存在を認めると、何だとつぶやいた。
「……お前か。ここでは何と名乗っているんだ?」
「ピースです。ピース・ピジョンです」
「平和の鳩か、お前らしいな。こっちはウィルド・ソーマだ。ソーマと呼んでほしい」
「ソーマ?」
「Sword Masterだからソーマ。スペルもそのままSwormaだ。……由来は省く」
彼はいつもの彼らしくクールに対応した。
しかしピースには疑問があった。
七虹異能学園は異能者しか来られない学園。ソーマが信互であったとき、彼が異能を持っていたことをピースは知らなかった。
だからピースは彼に訊ねた。
「信互く……じゃなくて、ソーマくん。何か異能とかあったの?」
ああと彼は頷いた。
「この力のせいで不運を強いられてきたんだ。申し訳ないが、相手がお前でも話さんぞ」
「そっか……」
人には人の事情がある。そこを下手に詮索するほどピースは野暮ではない。
そうこうしている内に、やがて学園の校舎が見えた。
確か体育館に集まるようにとかお知らせには書いてあった。ピースたちはその大きな校舎に足を踏み入れ、体育館を目指した。
みんながみんな体育館を目指していたため、特に考えなくても到着することができた。
体育館に入った生徒たちは思い思いに自由に広がった。
それからしばらくして、体育館の奥から学園長が現れた。何かが始まる予感がする。
彼女は金色の髪を揺らしながらも、手にマイクを持って皆に声をかけた。
「皆様、皆様。選ばれし能力者の皆様、よくぞお集まりいただきました。私はここの学園長のリェイル。今から校則と、皆様全員に『卒業試験』を差し上げます」
その言葉を聞いて皆、いぶかしげに首をかしげた。卒業試験? 一体何をしろというのだろう。
リェイルはふふふと微笑んだ。
「簡単です。皆様に殺しあいのゲームを演じてもらえればいいのです」
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