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私の頭に浮かんできたのは 凄く大きなダイヤですねー、何ctですかー? 高そうですねー、凄ーい なんて、棒読みの台詞だ 日向さんはじっと私を見つめてくる 私でも分かるくらい、真剣な瞳で 何て、勿体ない… 「…ありがとうございます す、すみません少し御手洗に…」 「あ…お、お気をつけて」 日向さん微笑む 普通このタイミングでトイレ行くか?ぐらい思っても良いのにだ 申し訳なさと、早く離れたい一心で、不自然じゃない程度に私は早歩きをした 残念ながらヒールのため速度はあまり出ないが だたっ広い廊下に出て、思わず溜息が出た 何故高校生の娘に婚約者など? 政略結婚というやつか? そんな疑問が湧いて、壁を殴りたくなる 相当に美形で素敵な人だった 将来も約束されたようなものだと思う 日向カンパニーは、国内有数の大手企業 そこの次期社長 容姿も端麗、おまけにあの物腰 申し分なんて無いはずだ それでも初恋もまだの、まだ子供な私と婚約など、些か飛躍し過ぎた話ではないだろうか 「あー逃げた…、っ!」 曲がり角、急に目の前に現れた影に衝突する 痛みは無く、倒れる事もなく、咄嗟に抱き止められたみたいだ 「すみません…」 「いえ…」 甘さを含んだ低い声が頭上から降ってくる 見上げると、全体的に黒い男性が其処にはいた 黒髪に、黒のスーツ、シャツは白だったがネクタイも白と黒のバイカラー その瞳は、紅茶のような、琥珀のような色合いで… 「綺麗…」 私は思わずそう呟く 「え?」 男性は少し驚いたように首を傾げている 「え、あの…すみません!」 あまりの羞恥に私は思わず化粧室へと走った 今度はヒールなのに結構な速度が出た…体感だけど 走ったからか、急に変な事を口走ったからか、動機はかなり激しい とても、綺麗な人だった 男性なのに白くて、色気のある人だった 特にあの綺麗な瞳 カラーコンタクトでもあんな綺麗な色合いは出ないと思う 声も爽やかなのに、少し掠れていて… 「あー…っ、やめやめ!」 両頬を引っ叩いて邪念を飛ばした 今は日向さんとの食事という名のお見合いを、かわす事の方が重要だ しかしながら、惚けた頭ではやはり何も浮かばず、私は結局二度目の食事を約束してしまうのだ
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