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「さよまた明日ね!」 「うん、また明日」 昇降口で美里と別れる 昨日散々疲れた上に、あまり眠れなかったから今日は授業内容があまり頭に入って来なかった 日向さんの歯の浮くような台詞と、ぶつかった綺麗な瞳の男性 同じ言葉でも、あの人から聞いたら素直に受け入れられたかもしれない…そう、感じるのは何故だろう 「俳優さんかな?」「モデルかも」「声掛けたい…っ」 校門前が酷くざわついていた 女の子達が皆揃って目を輝かせ、頬を赤らめている 何かを取り囲むような、そんな立ち位置だ 「どうしたの?」 「あ、一条さん 校門前に凄いイケメンがいるの!」 イケメン?…少し嫌な予感がする 昨日イケメンに口説かれたばかりだからだろうか 日向さんだとしたら見つからないように逃げなくては… そう意を決して校門をくぐる 「一条…沙夜さん…?」 「…え」 聞こえてきたのは昨日聞いた、少し掠れた甘い声 思わず振り返る その先に居たのは、昨日のスーツ姿と打って変わって白のシャツに黒ジャケットを羽織った例の彼 すぐ側には黒い車が停まっている お父さんの愛車より一つ下のグレードだけど、立派な高級車だ 「あぁ、やっぱり昨日の君だ」 「あ…えっと…」 白く輝く眩しい笑顔に、私は思わず顔を背ける どうして私の名前を? どうして学校に? 聞きたいことはあれど、動悸が激しくなり、言葉に詰まる 「大丈夫?」 「え!だ、大丈夫です…」 周りの女の子達はキャーキャー騒ぎながら、羨ましいと言わんばかりの目で私と彼を見つめている 恥ずかしくて、この場を立ち去りたい…そんな想いに駆られた 「あ、そうだこれ…」 「え…」 差し出されたのは私の学生証 ずっと気付かなかったけれど、どうやら昨日なんらかの形で紛失して、運良く彼に拾われたのだろう 「ありがとうございます…」 「いいえ、でも良かった 君に、また会えた」 その瞬間、どくんと胸が高鳴った 何だか胸が痛むような、苦しいような不思議な感覚に包まれる 詰まった息が、吐き出し方すら忘れてそのまま止まってしまいそうだった 爽やかな笑顔を浮かべながら彼は私を見つめ、少し首を傾げてから 「じゃあ、次は気をつけてね」 そう言って踵を返そうとする
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